我孫子市|勾配が足りないとカバーは危険?“できない勾配”とは?

屋根改修の相談を受けていると「できればカバー工法で済ませたい」と希望される方もいらっしゃいます。既存屋根を撤去せず施工できるため、廃材処分費や工期の短縮といったメリットがある方法です。住まいへの負担も小さく済むのは大きなメリットと言えます。
ただし、このような利点の裏側には見落とされやすい条件があるのです。その代表格として「屋根勾配」があげられます。屋根はほんの数度の角度差で排水の挙動が変化するのです。勾配が基準より浅い場合、雨が流れずに滞留するだけでなく、横風で押し戻されて逆流する危険も生まれます。
我孫子市は季節ごとの降雨量の差が大きく、利根川流域特有の湿気を含んだ風が吹く時期もある地域です。排水能力がギリギリの屋根は気象条件が重なった瞬間に、問題が顕在化することもあります。このような背景から、勾配を正しく把握しないままの、カバー工法の適用は大きなリスクにつながるのです。
そこで今回のお役立ちコラムでは、勾配不足で起こるトラブルや、地域特性による影響や調査の要点のほか、代替工法までわかりやすくお話しします。
屋根カバー工法は「角度」で成立が決まる理由

カバー工法の成立には「既存屋根が屋根材メーカーの定める最小勾配を満たしていること」が前提です。屋根材の重なり部には水を逃がすためのクリアランスがあります。一定の角度が確保されていることで、雨水が自然と流れ落ちるように設計されているのです。
ただし、この角度が不足すると水膜が残りやすくなります。わずかな隙間から水が回り込む「逆流」や「浸透」が起こりえるのです。この点を踏まえて、カバー工法を考えてみます。既存屋根を残して、上から新しい屋根材を重ねる工法です。角度を後から調整したくてもできません。つまり、最初の勾配が足りないと、その時点で構造上「施工不可」という結論に至ります。
我孫子市で「勾配」がより厳しく見られる理由
我孫子市は、春から秋にかけて風向が変わりやすい地域です。台風期には、一時的に強い横風が吹くこともあります。屋根の角度が浅いと、通常では起こらない方向へ水が侵入する現象も起こるのです。また、利根川流域特有の湿気を含んだ風が吹く季節では、屋根表面の乾燥が遅れる場合も出てきます。
水膜が想定以上に残りやすい状況になりますから、勾配が「基準ギリギリ」では不十分です。実際の風雨を考えると、一段階余裕を持った角度が必要とされる地域だと言えます。また、屋根表面に残った水が「動きやすい環境」となるため、屋根の角度が排水性能に直結するのです。
カバー工法が成立しない「勾配」とは?
一般的なスレート屋根の最小勾配は、一般的に3寸(約16.7度)前後です。金属横葺きは3〜4寸とされています。これを下回ると毛細管現象で水が上方向に伸びるように侵入したり、強風時に重なり部から水が吹き戻されたりします。
これらは「施工不良」ではありません。物理現象として避けられないため、メーカー側が最低限の角度を設定しているのです。「見た目が綺麗だから大丈夫」と判断されがちですが、勾配は表面の状態とは無関係と言えます。表面に割れがなくても、勾配基準を満たさない時点で、カバー工法は成立しません。
勾配不足が引き起こす具体的なリスク
勾配不足の屋根で最も問題となるのは、水が排出されず残り続ける「滞留」です。滞留した水に横風が加わると、重なり部に水が押し込まれる「吹き返し」という現象が発生します。そのため通常では入りにくい方向へ水が侵入するのです。
また、カバー工法では既存屋根を残すため、空洞部分に湿気が溜まりやすくなります。その結果、完全に乾くまで時間がかかるという構造上の特性があります。これにより、野地板の乾燥が遅れ、含水状態が続いて腐朽も進むのです。後から下地ごと交換が必要になる場合さえ出てきます。屋根内部の湿度上昇は、ルーフィングの耐久低下にもつながるため、勾配不足は単なる浸水リスクに留まりません。構造そのものの寿命を縮める要因になりえるのです。
勾配は「見た目」では判断できない|調査の重要性

外観だけを見ると、屋根勾配は「思っているよりあるように見える」ことが多いものです。ただ、実際に計測すると基準に届かないケースは珍しくありません。築20〜30年のスレート屋根では、経年による梁のわずかな変形もあります。野地板の一部沈下などで、施工当初より実勾配が浅くなっている事例も見られるのです。つまり、勾配は見た目だけで判断してはいけない要素と言えます。
屋根勾配の正しい確認方法
屋根の表面だけでなく、屋根裏に入り梁の傾きや野地板の沈下状況を確認し、複数箇所で計測する必要があります。実際の現場では、表面勾配と屋根裏勾配に差があるケースも少なくありません。レーザー測定器・水平器・屋根裏側の構造確認を組み合わせて、総合的に判断することが重要です。
内部構造が悪いと勾配が足りても不可
勾配が基準値を満たしていたとしても、野地板の腐朽・含水・ルーフィングの破断などがあると、カバー工法は成立しません。既存の下地がビスを保持できない状態だと、カバー工法を行っても強風時に屋根材が浮きます。また、ビスが抜けるリスクも高まるのです。
勾配不足でも選べる代替工法:状況別の最適解

勾配が不足していても、屋根の状態に合わせて安全に施工できる代替工法は存在します。角度や下地の状況に応じ、選択肢を整理すると、最適な改修方法が見えてきます。
塩ビ・TPOシート防水
1〜1.5寸の超低勾配でも適用可能で、継ぎ目を溶着するため長期的に安定した防水性を確保できます。既存屋根を撤去して下地から組み直すため、腐朽している場合の改善にも向いている方法です。
緩勾配金属屋根(立平葺き)
2寸前後の勾配なら、立平葺きなどの緩勾配専用金属屋根が有利です。縦方向へ水を逃がす構造で逆流リスクが低くなります。軽量で建物全体への負荷も小さく済む方法です。
葺き替え(勾配+下地が問題の場合)
勾配が足りず、さらに下地の劣化も進んでいる場合は、葺き替えが確実です。既存屋根を撤去して野地板の補修を行います。必要に応じて、勾配調整も加えながら、新しい屋根材へ変更する方法です。安全性と耐久性を同時に確保できます。
ただし、留意点があります。これまでお話ししてきましたが、記事に含まれる数値は代表的な一例です。製品ごとに異なるため、施工では屋根の専門業者に相談が求められます。
参照:ケイミュー
参照:JFE鋼板住宅屋根カタログ
参照:ニチハ「アスファルトシングルアルマ」
FAQ|我孫子市の勾配不足とカバー工法についてよくある質問
屋根カバー工法を検討する際、多くの方が「勾配が基準を満たしているかどうか」で判断に迷われます。特に我孫子市は風向変化や湿度の影響を受けやすいため、一般的な基準だけでは判断できないケースもあります。ここでは勾配不足に関するよくある質問を、実務者の視点でまとめました。
Q.勾配が基準ギリギリならカバー工法はできますか?
A.基準ギリギリでは推奨できません。我孫子市は横風や湿気の影響を受けやすく、カタログ値通りの性能が発揮されない可能性があります。実際には「+0.5寸以上」の余裕が必要なケースがあります。
Q.見た目では勾配があるように見えますが、それでも危険ですか?
A.危険な場合があります。屋根は見た目以上に実勾配が浅いことが多く、経年で梁や野地板が沈下し初期勾配より数%低くなっていることもあります。必ず計測が必要です。
Q.勾配不足の場合でも、一部だけ補修してカバー工法にできますか?
A.勾配は構造全体の問題のため、一部だけの補修では解決しません。部分施工で角度を変えることは難しく、構造的に安全性を確保できないため非推奨です。
Q.勾配が足りないと言われた場合、どの工法が良いですか?
A.勾配が1〜1.5寸ならTPO・塩ビシート防水、2寸前後なら立平葺き、さらに下地が悪い場合は葺き替えが現実的です。状況に応じた判断が必要なため調査が必須です。
Q.勾配不足をDIYで改善することはできますか?
A.できません。勾配は建物の構造(梁・野地板)から成り立つため、DIYでの調整は不可能です。無理に施工すると雨漏りだけでなく強風時の飛散リスクがあります。必ず専門業者へ調査を依頼してください。
まずは専門診断から|石井建装が“勾配不足の誤判断”を防ぎます

勾配不足の屋根にカバー工法を適用するかどうかは、見た目では判断できず、屋根裏の構造・野地板の状態・地域特性まで総合的に確認する必要があります。
我孫子市は雨量変化の大きさや湿気を含んだ風の影響が強いため、全国一般の最小勾配基準よりも厳しい視点で判断しなければ、後から逆流・滞留・吹き返しなど重大な雨漏りを引き起こす可能性があります。だからこそ「勾配の正確な計測」と「屋根裏側の状態確認」が欠かせません。
石井建装ではレーザー測定器・屋根裏調査・野地板含水率チェックなどを組み合わせ、目視だけでは分からない“勾配不足の落とし穴”を徹底的に排除します。カバー工法ができるか迷っている方、代替工法を検討したい方、まずは現状がどうなっているか知りたい方もお気軽にご相談ください。お問い合わせフォームからのご相談、メールでの問い合わせ、電話でのご相談、ショールームへの来店など、お客様のご都合に合わせて対応いたします。
間違った判断で将来の雨漏りを招く前に、地域事情を熟知した石井建装があなたの屋根の状態を正しく診断しますので、どうぞ安心してご依頼ください。











コメント