店舗での水漏れトラブル|判例から学べば事前対策ができる
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代表取締役の石井です!
賃貸店舗での水漏れは、賃貸人と賃借人どちらに責任があるか法的なトラブルにつながる場合もあります。店舗の水漏れの理由はさまざまです。構造的な欠陥、隣接店舗の問題や自然災害などで水漏れ被害が発生する場合もあります。
店舗の場合、営業活動ができなくなるかもしれません。商品が濡れて売り物にならない場合も出てきます。オーナーである賃借人の立場では「自分に責任があるのか?」と考える方もいるでしょう。修繕費用も安くないですから簡単に対応できないものです。
そこで今回のお役立ちコラムでは、店舗の水漏れは誰に修繕の責任があるのか、判例も踏まえてお話しします。
目次
雨漏りと水漏れの違い
店舗での水漏れは雨漏りと違います。同じ意味の言葉として使用する方もいるため、誤解するのもしかたありません。雨漏りと水漏れに対し、最初に意味を明確にしておくことは重要です。トラブルになった場合、店舗の借り主である賃借人と話が噛み合わない可能性もあるからです。
また、補修業者と契約する場合でも、対応範囲が違うと補修できません。たとえば雨漏りが原因なら、屋根や外壁塗装や補修専門業者が対応できます。一方水漏れは、水道設備業者の専門範囲です。この点からもまったく異なる分野なのがわかります。
雨漏りは雨水が建物の外から内部や室内に侵入するトラブルです。一方の水漏れは内部や外部関係なく、排水設備の劣化や人為的なミスで起こるトラブルを意味します。ただ、雨漏りと水漏れ、どちらが原因か判断できないトラブルもあります。たとえば天井に黒いシミができた場合、雨漏りも水漏れも可能性があるからです。
雨が降っていないのに天井にシミができたなら水漏れの可能性は高いでしょう。ただ、雨が降った日に排水管にトラブルが発生する場合もあります。水道の元栓を閉めたのに水道メーターが動いているなら、水漏れの可能性が考えられるのです。どちらにしても専門業者を呼んだほうが確実に原因を特定できます。
賃貸関連の責任について知っておきたい民法601条と606条
賃貸契約では物件を貸す賃貸人と、借りる賃借人が存在します。賃貸人は賃貸物件の使用や収益を相手にさせることを約束します。賃借人は賃料を支払い、契約終了後は返還することを約束するのです。これが賃貸契約の基本です。
賃貸物件の水漏れや雨漏りのようなトラブルが発生した場合、民法606条が関係します。民法606条は、賃貸物の修繕に関してはオーナーである賃貸人が義務を負うとしています。ただし、賃借人の責任により修繕が必要になった場合は例外です。たとえば賃借人が、わざと、またはミスで屋根や外壁を壊して雨漏りや水漏れになった場合、当てはまります。
店舗での水漏れトラブルが発生した際、賃貸人か賃借人、どちらがお金を出して修繕するかは、この民法606条が大きく関係するのです。
賃貸店舗の関する水漏れの判例
ここから賃貸店舗に関連する水漏れ裁判の判例をお話しします。訴訟トラブルに巻き込まれないためにも、事前にどのような判例があるか知っておくと対策もできるのです。
漏水事故による賃料の減額と不当利益返還請求を行った事案
賃貸店舗が漏水事故を起こしました。1階店舗、エアコンの室外機置き場から水漏れが発生した事案です。その際、1階店舗に被害が発生しています。
賃借人は賃貸人に対し、損害賠償請求と賃料減額請求権行使を前提とする不当利得返還請求を行いました。
訴訟した原告は、原告が借りた部分に被害が生じても、賃貸人が修繕しないことを問題視したのです。これは民法第606条の賃貸借契約の修繕義務に違反しているという主張です。
判例は修繕義務違反に基づき、損害賠償請求の一部が認められました。給排水設備工事は、改正前民法606条の修繕義務に含まれるとされたのです。使用収益の一部が不能になったことで賃料減額が認められています。すでに払った賃料の不当利益返還請求も認められました。
参照:日本防水協会 裁判例から学ぶ。押さえるべきポイントを紹介!「賃貸店舗の漏水事故」
賃貸店舗の美容室で長期間水漏れが発生した際の判例
美容室で長期間水漏れが発生した際の判例です。月賃料16万円、店舗に入居した直後、天井からの雨漏りや床に水が貯まりました。
ビルオーナーに報告をして、応急処置の工事はしてもらっています。ただ、水漏れは治まらなかったのです。賃借人が再び対策を願い出ても、対応してもらえませんでした。
雨の日に悪臭、予約の問い合わせがあっても断るしかない状況が10年続いています。ようやくオーナーが散水検査をはじめとした調査を実施し、無事に雨漏り原因を特定できて水漏れが止まりました。
ただ、賃借人は水漏れが治まらなかった期間、正常に店舗を使用できなかったことに問題を感じたのです。賃料の一部減額でもおかしくないという主張でした。
「雨漏りで予約を断る」「汚れた部分の掃除」「オーナーが修繕の対応をしてくれなかった」「嫌なら出ていけと言われた」
これらの言動や対応を問題視し、精神的苦痛を被ったため、慰謝料請求を求めたのです。
この話は東京地方裁判所平成26年10月9日判決の事例をモチーフにしています。判例では「賃貸人は雨漏りに対して必要な修繕義務を怠った」ことが認められています。民法606条の修繕義務違反に該当すると判断されました。ただし150万円の慰謝料請求は、20万円しか認められておらず請求より低い金額です。実は当事者間の契約違反問題では慰謝料自体を認めるケースは多くありません。認められたこと自体が珍しい判例なのです。
参照:弁護士の賃貸・不動産法律相談 長期間漏水が発生し賃料の一部減額と慰謝料が認められた判例
豪雨で店舗の床が冠水して賃貸人の損害賠償責任が認められた判例
床の冠水で賃貸人の損害賠償責任が認められた判例です。台風が接近し、短時間の豪雨が発生しました。マンホールの中の水かさが増し、排水管を通って逆流した水が地下店舗にあふれて床が冠水しています。
ただ、以前から約3年間、漏水や浸水自体、11回程度発生していたようです。カウンターキッチンが使えないほどの被害が発生したこともありました。飲食店のため、衛生面の問題やガス漏れのようなリスクもあり安全面でも問題があったと判断されています。
賃貸人はジョウロを設置するといった応急処置しか行っていません。抜本的な修繕や水漏れ防止措置は行っていないのです。賃貸人の修繕義務を違反していると判断されました。
参照:不動産賃貸経営博士 台風による被害!家主は入居者に対し損害賠償責任を負うか?賃貸住宅の自然災害トラブルの判例や修繕義務 賃貸人の損害賠償責任を認めた裁判例
賃貸人の責任が認められなかったケース
こちらは、賃貸人である建物オーナーの責任が否定された事例です。店舗ではなく通常のマンションですが、同様のことは賃貸店舗でも起こる可能性があります。
賃貸人はリフォーム会社に依頼し、10階の部屋のリフォーム工事を行いました。リフォーム工事中、作業員が部屋の配管を詰まらせたことで水漏れが発生。結果、階下の9階の部屋が浸水しました。
賃借人は「オーナーが依頼した工事会社のミス。そのためオーナーも責任を負うべき」と主張したのです。慰謝料200万円を請求されました。
リフォーム会社だけではなく、オーナーもともに被告として損害賠償請求をされたのです。裁判所は賃貸人であるオーナーの責任は否定しました。リフォーム会社のミスまで賃貸人が責任を負うのはさすがにむずかしいと判断したようです。ただし、リフォーム会社への合計230万円の慰謝料は認められています。賃借人は水漏れ事故で仕事の受注ができなくなったと認められました。自律神経失調症やうつ病により治療を余儀なくされたなどの事情も考慮されたのです。
参照:弁護士の賃貸・不動産法律相談 建物オーナー(賃貸人)の手配したリフォーム工事において、リフォーム会社の不注意で階上から漏水したことについて、建物オーナーは賠償責任を負うか
水漏れの判例を知ることの重要性
水漏れの判例を知ることは重要です。
- 責任の判断
- 損害賠償請求に関すること
- 予防策
- 契約書を作成するための参考材料
これらの情報は賃貸人、賃借人、両方にとって重要な意味を持ちます。賃貸人は水漏れが発生した場合、修繕をする義務があるのです。上記の判例では、オーナーが修繕義務を果たしていないとされました。裁判の結果まで左右する大きな意味を持つのです。
また、水漏れだけではなく雨漏りも大きく関係します。雨漏りは賃借人が屋根や外壁を壊したのではない限り、賃貸人が責任を持って修繕しなければなりません。修繕せずに雨漏りを放置すると、賃借人との訴訟トラブルにつながります。店舗ですから、営業不能、製品がダメになるなどの問題が出てくるでしょう。その点も踏まえると、損害賠償や慰謝料の金額が大きくなる可能性もあります。
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石井建装は茨城県で累計1,000棟以上の実績を誇っています。地域密着店として多くの外壁リフォームを行ってきました。
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